土師弘之税理士事務所 > お知らせ > 税務相談について
先日、新聞で気になる投稿を読んだ。税務相談に係る話である。
マンションの賃貸業を個人で営む男性が、マンションの外壁塗装・屋上防水工事をしたため、この耐用年数を確認するため市民相談(税務)に訪れたところ、担当税理士から、大規模な資産の増加にあたるため本体建物と同じ耐用年数47年で減価償却するように説明されたとのこと。
この男性は、その説明に納得いかなかったらしく、所管の税務署に聞きに行ったところ、「当該工事は一般的なリフォームサイクルである10年が当てはまる」と助言を得たと書かれてあった。
おそらく修繕費で処理できると聞いたのであろう。
この内容は、税務の現場でよく議論される「修繕費と資本的支出」の問題である。
税務上、「資本的支出」に該当すると、本体と同じ減価償却資産を新たに取得したものとして取り扱われることとなっている。
したがって、外壁塗装・屋上防水工事が資本的支出に該当するのであれば、47年で減価償却しなければならないこととなる。市民相談ではそのように判断したものと推測される。
どのような内容の工事であったのか誌面上知る由もないが、
税務上、修繕費とは「通常の維持管理のため、または、原状回復するために要した部分の金額」、資本的支出とは「固定資産の価値を高め、または耐久性を増すこと認められる部分の金額」としている。
つまり、修繕費か資本的支出かという区分は、解釈の問題ではなく、原状回復かあるいは価値・耐久性の増加かの事実認定の問題であると考えている。
であるので、基本的な内容での対応を目的としている税務相談の場において、修繕費か資本的支出かの結論を求めることは、かなり無理があるのではないかと思っている。
俗に、一戸建ての外壁塗装は「築10年が目安」と言われている。これは、メーカーによると、塗料の耐久性(耐用年数)に深い関わりがあるということだそうだ。材質がアクリルなら2~3年、シリコンなら5~12年といった具合である。今流通しているサイディング外壁は7~8年だという。
また、ビルやマンションの塗装は、大体15年前後持つように設計していると聞いたことがある。
このように考えると、リフォームサイクル10年という回答ははたして的を得た回答であったのか、いささか説明不足であると感じずにはいられない。投稿者が、「市民相談は建前論に終始した。」とする一方、「税務署は納税者有利に対応してくれたと称賛」しているだけに。
過去の具体例を見てみると、
外壁塗装については、サイディング外壁からタイル塗装に張り替えた工事は、デザインの変更や耐久性向上を目的とした資本的支出とされた事例や、
屋上防水工事については、建築時に予想された使用可能期間を増加させる工事として資本的支出に該当するとした裁決例が
ある。
修繕費か資本的支出かの問題は、形式論で判断できるものでもなく、実質的に判断しようとするなら、工事をしてもらった施工業者に専門家としての参考意見を聞いておくべきだと思うのだが。